モンスタークライアント対策でWEB制作を効率化
我々が働くWEB制作の現場では、年に2〜3度「モンスタークライアント」という化け物のようなモンスターが現れる。
丁寧に対応しているにもかかわらず、言いたい放題のわがままモンスターのおかげで、労力だけでなく精神までむしばまれている人は少なくないはず。今回はそんな「モンスタークライアントの生態と行動パターン」とWEB制作者を守るべく、その「モンスタークライアント対策」を贈りたいと思う。
また記事の中で紹介する、モンスタークライアント対策に必要な魔法書
「WEB制作に便利なクライアントヒアリングシート」
を記事の途中で、無料でダウンロードできるようにしているので、
記事の説明を読んだ上で是非、活用下してほしい。
まず最初に、結論から伝えておくべき最も大事な事が「書面(メール)と口頭で、事前に伝えておく」という事である。モンスタークライアント対策として、ほとんどすべてに共通する一番大事な事なので、最初に押さえておこう!
口頭だけでは言った言わないの水掛け論になるので、書面(メール)で伝える必要があるという事と、逆に書面だけでは「読んでなかった」という可能性がある。(もちろん書面で送っているので問題は無いのだが)できるだけモメない為にも可能なかぎり口頭でもあわせて伝えよう。
超低予算なのに超一流を求める
低予算の案件なのに、高予算の大手一流のサイトと比較して、
このサイトみたいにならない?
といった要求を突きつけられる事がある。物理的な仕様部分のわがままであれば、まだ反論できるのだが、デザインのワガママとなるとなかなか反論しにくいものである。しかしこれも事前の説明である程度防ぐ事ができる。
クリエイターなら誰しも最高のクオリティのものを作りたいだろう。しかしそれが出来ない時には理由がある場合があり、それを事前に伝えればいいだけだ。
分かりやすく言うと一流ものもを作る為に必要な要素を事前にリクエストするという事だ。それは例えば、時間であったり整った原稿であったり、写真であったり、ステキなコピーであったり、見栄えの良いロゴであったり、潤沢な予算であったり。。。
最初の打ち合わせの段階で一流のものを作る為にこれらが必要である事を伝え、それが揃わない部分についてはクオリティーが落ちるという話をしよう。
特に素人の場合はデザインだけでサイトがいいものになると思っている人が多い。良いサイトは良いコンテンツであったり、整ったわかりやすい文章であったり、美しい写真であったり、目を引くコピーがあったり、事前の入念な調査や設計があって、デザインのチカラでそれを最大限に引き上げる事ができるのだ。逆に内容がゼロに近いのものは、デザインのチカラだけではどうにもならない場合がほとんどである。
つまり一流のものを作るのには一流の材料が必要だという事を伝えよう。
とりあえずデザイン作ってみて。それから考えます。
仕様も内容も方向性も決まっていない段階で
とりあえずデザインしてみてくれませんか?
それを元に考えますので。
などと言われた事はないだろうか?
おいおい舐めてんじゃねーぞ、と思うだろうが、クライアントは素人。内容を考えるには「たたき台」が必要な場合ももちろんあるだろう。それをいちいちデザインとして上げるのはもちろんありえないのだが、そんな時はまず、制作する上で必要な内容をきっちりヒアリングし、こちらが考えるベストな内容や方向性を考え、デザインする前にその方向性を確認しよう。「この方向性でデザインを作っていいですか?」その段階で方向性や内容が違えば、無駄なデザインをあげずに済む。事前に方向性があえばその段階で、たたき台としてのデザインに着手しよう。しかしこの方向性や内容を考えたり調査したりするのにも当然時間と費用がかかるので、「企画提案費」として別途かかる旨を事前に伝える必要がある。さらに出したデザインが全く無駄になる可能性は大いにありうる。そこで口頭で言う場合は、次のような感じで伝えてみよう。
クライアント:「とりあえずデザイン作ってみて」
あなた:「ご依頼ありがとうございます。もちろん作成させて頂きますが、弊社の方で内容や方向性を考えデザインする場合は、通常企画提案費をいただいております。またそのデザインに修正が必要な際、一度確認頂いた内容と方向性に変更が入る場合、別途費用がかかってしまいますのでご注意ください。」
こんな風に言うとクライアントは「いや・・一旦こちらで考えます・・・」となる場合もある。クライアントは自分で考えるのが面倒だからこちらに投げて来る場合もあるので、その重い腰をあげさせる意味合いもあるのだ。
「デザインに関してはプロにお任せします」と言っておきながら・・・
最初にこんな事を言われた事はないだろうか?
デザインはプロの方にお任せします!
こんな感じで持ち上げるような人ほど、あとからデザインに口出ししてくるタイプが多い!もちろんすべてではないが、結局お任せしますと言う人は、最初に考える事を放棄しているに過ぎず、出てきたデザインに対してようやく腰をあげて考えるのです。例え「デザインはお任せします!」と言われても、デザインにかかる前にデザインの方向性やテイストのヒントになるようなヒアリングは必ずしておこう!
内容や仕様が決まっていなのに見積もりを要求してくる
クライアントはとにかく見積もりを急ぐ傾向にある。もちろん企業としては予算があり、事前にいくらくらい掛かるか知る必要があるので仕方ない事であるが、概算で出した見積もりでクライアントが予算を確保し、実際に制作する段階で予想以上に工数のかかる仕様になり、とんでもない目に合う事があるだろう。
そんな事態を避ける為には、あくまで概算見積もりである事を伝え、その概算見積もりに、こちらの「想定する仕様」を添えて提出しよう。この仕様以外の場合は当然見積もりが変わる旨を伝えます。
そして概算見積もりで予算を確保しても、見積もりが変わる可能性が多いにあるので事前に注意してあげる事も必要だろう。ただし企業によっては概算見積もりの段階でどうしても事前に予算を確定しないとイケない場合があるので、その時は概算見積もりにできるだけ多めのバッファを乗せて予算を確保するようにアドバイスしてあげよう。
見積もり確定後に仕様をどんどん追加してくる
クライアント様は常にワガママをおっしゃる生き物です。当初は考えていなかったが作っていくうちに「あれもほしいこれもほしい」最初の見積もりには入っていない内容がどんどん増える一方で、「納期は変わらない・予算はこれ以上出せない」。
まぁ制作側としては本来断っていいのだが、クライントとの付き合いや断れない政治的な理由など様々あるだろう。
大きなものならまだ断りやすいのだが、細かい仕様の追加だとついつい黙認してやっていまうもの。また制作担当者とクライアントの窓口担当者が、実務段階で直接メールなどでやりとりしてしまっていると、どこまでが仕様範囲内かわからなかったり、立場が弱く強く断れずに、作業者の裁量内で作業をしてしまっている人もいるだろう。
そこで、仕様の追加を防ぐには何が大事かというと、制作前のヒアリングで仕様をしっかり確定して、あとから追加したくなりそうな内容を先回りで想定して、それが必要ないかどうかもクライアントに事前に聞いて確認する事だ!それには、打ち合わせの時に頭の中だけで喋って確認していると、どうしても確認漏れが出てくるだろう。
そこで必要なのが「ヒアリングシート」の類だ。WEB制作するにあたって聞かなければならない内容をまとめて、プリントアウトしたり、ノートパソコン上でそれを見ながらチェックしていく事で、事前のヒアリング漏れや、仕様の漏れを防ぎます。
今回は「WEB制作に便利なクライアントヒアリングシート」をダウンロードできるようにしました。こちらを活用したりまた自分なりにカスタマイズして使って下さい。(これはクライアントに渡すものではありません。あくまでヒアリング時の確認項目のチェックとそのメモとしてお使い下さい。)
しかしこのようなヒアリングシートを使って確認しても、あとから仕様を迫られる事は当然あります。なので事前に仕様が追加される場合は「別途費用が必要になる旨を見積書に必ず記載」し、口頭でもその事をしっかり伝えておこう!
クライアントからの原稿の支給が遅いのに納期はゆずらない
「クライアントからの原稿や情報が予定よりも遅れているのに、納期は変わらない。」なんとも理不尽な内容だが、本当によくある話。
しかしこれも事前の段取りで防ぐ事ができる。最初にタスク毎の細かなスケジュールを作成し、原稿支給のデットラインをあらかじめ引いておき、それを過ぎる場合はおのずと納期もそのままスライドする旨を事前に伝えよう。
大きなサイトの場合原稿の支給のタイミングが数回に別れる場合があるが、面倒だがその都度、原稿支給のデットラインを伝えるクセをつけよう。
支給される原稿や素材が整理されていない
クライアントから頂く原稿のクオリティで、我々制作者の作業スピードは随分変わるのは体感した事があるだろう。
最悪な支給原稿として挙げられるのは、印刷したものに手書きで書いてあったり(その字が小学生バリの汚い字)、社内資料を一式送ってきて、サイト制作に関係無いものまで混ざっていたり、どこのページの原稿だか説明してもらわないとわからなかったり、文字量がバラバラでデザインバランスのとりにくい原稿だったり、原稿に「?マーク」がついている「迷いのある原稿」だったり。
支給された原稿が完全にFIXしていない原稿というのは制作者泣かせである。
反対に理想の原稿
- すべての原稿が当然テキストで打たれている
- 文字量が一定して見出しが均等に付いている
- 原稿の段階で内容が完全にFIXしている
- どのページの原稿なのかサイトマップの名前と一致している
こんな素晴らしい原稿が支給されたら、制作者のスピードが上がるだけでなくモチベーションやデザインクオリティーも上がるのは当然である。
これも事前にテキストデータが必須である事や原稿のクオリティで出来上がるサイトのクオリティが左右される事を、最初の打ち合わせでそれとなく伝える事で最悪の状態は避けられるだろう。
電話の口頭での指示が多く、言った言わないの問題に発展
クライアントの担当者の中には、メールでの指示ではなく、電話だけで内容や修正の指示を出す方がいる。
また、普段はメールでも口頭で伝えないとややこしい場合や、逆にこちらから電話して聞いた内容や、直接合って聞いた内容などは、あとから言った言わないの問題に発展する事がある。
電話にしろ直接会った時にしろ、口頭で聞いた指示は、必ずその日のうちにメールで議事録や備忘録的に打ち合わせ内容を共有しておこう。電話の後の場合は、聞いた内容をその場で直ぐにメールする事で忘れないようにする事にもなるし、直接会って打ち合わせた場合は、時間を頂いたお礼のメールとして議事録を送ればいいのだ。
返事がとにかく遅く工期が異常に長くなる
返事が鬼のように遅い担当者もたまにいないだろうか?
返事が遅い理由は、クライアント社内の他部署との連携の問題であったり、担当者の単なる業務怠慢であったり、クライアントの本業の繁忙期であったり、いくつかあるだろう。
しかしあまりにもすべての返事が遅かったりすると工期が長くなり困る事がある。納期が短いのも大変だがあまりにも工期が長いのも考えものだ。
返事が遅く時間が空くと、制作者サイドとしては、他案件と平行して作業している事で、やっていた内容をドンドン忘れてしまったりする事もある。その度にメールや仕様書を見返してやりとりするのは時間の浪費であるし、使う予定だったレンポジが期限切れでサイトから無くなっていたり、暫定的に借りたレンタルのテストサーバーが期限が切れたりと、さまざまな弊害がでてくる事がある。なにより制作者サイドとして困るのは入金が遅れるという事だ。
これを防ぐには最初の打ち合わせや見積もりの段階で、工期を決めておくことである。急がない案件の場合は多少余裕を見て、3ヶ月なら工期3ヶ月と見積書に記載し、備考欄に3ヶ月を超える場合は別途「進行管理費」が必要などと記載しておく。これは進行管理費を稼ぐのが目的ではなく、工期が伸びたり、担当者がダラダラしないような予防線といっていいだろう。
速く納品できるものは、速く納品してどんどん新しい案件を受けたいものである。
デザインを何度もやり直しさせられる
これは誰もが一度は遭遇したことがあるのではないだろうか。デザインの技量の問題だと言われれば何も言えなくなるかもしれない。もちろんクライアントに問題があるのかもしれないが、だいたいがコチラ側の事前調査不足の場合が多い。
デザインのやり直しを避けるには、デザイン前のクライアントの要望のヒアリングや、競合調査、参考サイトをいくつか見せてデザインテイストの事前にすりあわせておくなどの下準備を入念に行う事で、できるだけクライアントにあった良い物を、一発で作るのが理想である。
しかし何度もやり直しさせられる理由が、クライアント側に問題がある場合もある。クライアントの頭の中で迷いがあったり、クライアント社内での意見の相違で、窓口担当者はデザインを気に入っているが、その上長は違うテイストを望んでいたりなど。
これには「予算における修正可能回数」をあらかじめ決めて、クライアントに伝えておくしかないのだが、やはり前述した下準備でクライアント内での「デザイン理想像」を固めておいてもらう事も重要であろう。
船頭多くして船山に登る
このことわざを聞いた事があるだろうか?これは「指示出す人が多いと、作業は思わぬ方向に進んでしまう」という例えである。
まさにWEB制作の現場ではこの状況におちいる事が多い。例えば、広告代理店を挟んだ制作会社の案件の場合。制作担当者とクライアントの最終決済者の間には何人の人が介在するだろうか。
クライアント最終決済者→クライアント窓口上長→クライアント窓口→広告代理店担当→制作会社窓口ディレクター→WEB制作担当者。
この例の場合でも5人の人間が指示を出す事になる。まさに5人の船頭があらゆる違う方向を指示しだしたらどうなるだろうか?また大きな案件になると、広告代理店の場合は「孫請け」といった状況になったりすると、とにかく多くの人が介在する事になる。
これだけ間に入る人数が増えると、指示の方向がブレるというだけでなく、単純に「伝言ゲーム」として正しい情報が伝わってこないという弊害もある。
こういう大人数が介在する場合の対策としては、とにかく「制作会社窓口のディレクター」が「広告代理店担当者」を巻き込んで熱意をもってディレクションするしか方法がない!交通整理や事前確認、最終決済者への意思疎通経路のチェックなどディレクターの腕の見せ所と言えるだろう。
納期間際に上層部からの鶴の一声
クライアントがある程度の規模の企業の場合、最終決済者の社長や上層部が、サイト構築の最終段階でチェックするというパターンで、鶴の一声の大ドンデン返し!!これに泣いた方も多いのではないだろうか。これはクライアントの窓口になる担当者の技量や、その企業のルールや風潮にもよるのだが、出来る限り避けたいところである。
あくまでクライアントの都合であり、コチラ側としてはスケジュールによるチェック期間を過ぎた変更は、納期が守れない旨を事前につたえるしかない。会社の風潮もわかるのだが、窓口の担当が本気を出せば、上層部に事前にチェックしてもらう事は不可能な事ではない。こちらも本気で制作しており、担当者にも本気になってもらうよう説得しよう。
まず我々にできる事は、最初のキックオフミーティングの段階で、最終決定権がある人が誰なのかを確認しておく必要がある。その上で、どうしても上層部の事前チェックが難しい場合は、最悪の場合のシナリオを事前に担当者と打ち合わせてにぎっておく事が必要だろう。
モンスタークライアント対策のまとめ
以上、モンスターなクライアントの事例を上げればまだまだ出てくるだろう。冒頭で伝えた「事前に書面や口頭で伝える」という事が基本ではあるのだが、それでもうまくいかない場合は当然出てくる。それでも事前に伝えてあるのとそうでないのとでは、責任の所在が違ってくるのは明らかだろう。責任がクライアントにあるとなると、クライアントも低姿勢な対応をしてくれるだろう。高圧的な態度で嫌な修正をやるよりは、低姿勢にお願いされるだけでも、制作者の心情は大きく変わるだろう。
モンスタークライアント対策の基本は「先回りして事前に伝える」という事が重要なのだ
そしてその伝え方として一番いいのは、良いサイトを作りたいのでクライアント様にも協力してほしいという姿勢でこちらの情熱を伝えて、クライアントにやる気を出してもらうのが、一番良いのではないだろうか。
ただどうにもならないクライアントはいます。また、クライアントだけでなく、自社内のディレクターがクライアントに確認してくれなかったり、間に入っている代理店の方が動いてくれなかったり。
そんな環境になると会社へ行くのが憂鬱になる事も。どうにもならない場合は、上司に相談して担当を変えてもらうか、自分自身の転職を考えるのもひとつかもしれません。
そんな方はこちらの記事も合わせて読んでみてはいかがでしょうか。
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